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「職員であり学生である、最強の二刀流を使って教育現場に関われる、この上もなく素晴らしい1年間。」実践型インターンinterview

vol.025Interview
Profile

杉浦 遥平 Sugiura Yohei NPOカタリバ 実践型インターン

立場が異なる人への想像力や物事の因果関係を推測する力を、社会科の授業を通じて育みたいと教員を志し、千葉大学教育学部に通っていた杉浦。やがてその関心は、生徒に教えることから、教育を取り巻く構造への疑問に変化し、公的教育の組織開発を学ぶために大学院へ。東京大学大学院 教育学研究科 学校教育高度化専攻 学校開発政策コースへと進み、理論的なことを学ぶ中で、実践フィールドを求めて参加したカタリバの実践型インターンシッププログラム。(実践型教育インターンシップ:日本が抱える様々な社会課題に対して、「教育」という角度から1年間本気でコミットする、学生向けのプログラム)苦しい時期を乗り越え、杉浦にうまれた変化とは?

文句を言うだけの自分にはなりたくない。実践から学ぼうと、勢いで飛び込んだ教育現場。

杉浦さんは教育学部から東大の大学院に進み、教育行政を専攻されていますね。経緯をお聞かせいただけますか?

もともと大学は、教員を目指して千葉大学の教育学部に通っていました。教員になろうと思ったのは、自分が高2くらいの頃に起きた、いじめを苦に自殺した中学生のニュースがきっかけです。当時学校側の対応に批判が集中していたのですが、自分はそんな風に人をいじめて追い詰めてしまった生徒たちのことを考えていました。もっと、異なる人の立場や気持ちを考えたり、因果関係を捉えて何が起こるか推測する力とか、考える力を育めれば、こんな悲しい事件がなくなるのではないかと。程度はどうあれ、自分自身もいじめのようなことで傷ついた経験があったので、当事者意識を持って、そんな風に考えていました。それで当時社会科の授業が好きだったので、授業の中で現実的に起きた問題も取り扱っていくことで、そういった考える力を育めるんじゃないかと思い、社会科の教員を目指していました。

でも大学で学んでいることに違和感を持つようになって。「いじめは絶対に許してはいけない」とか、そういう考え方ばかりを学んで、実際に現場で起こっていることは取り上げられないし、どうアプローチするかを学ぶ機会がない。これでいいのだろうかと、疑問を持ったことをきっかけに色々と調べているうちに、教員を取り巻く構造的な問題に関心を持つようになりました。なぜ教員の人事異動は頻繁に行われているのに教員人事についてあまり研究されていないのか、公的教育にも民間企業のように、人事や組織開発の視点をもっといれないといけないのではないか…そんなことをもっと学びたいと考えて、東大の大学院を受けて、院に進むことを決めました。

大学院に進んで半年後には休学して実践型インターンシップに参加されていますね。

大学院に進むと、周りに理論的なことを学びながらそれを実践するフィールドも持っている、という活動的な人が増えました。自分はというと、カタリバの教育ボランティアに参加したことはあったのですが、それだけ。現実に起きていることから学ぶべきだと思っている自分が、教育現場をさほど知らずに論述していることが、説得力がなくて中途半端な気がしていました。

そんなタイミングで実践型インターンシッププログラムのチラシを見つけて、えいやで申込みました。このまま院にいても、文句を言うだけの自分になる可能性があると思ったんです。文句を言うのではなく、自分がこうだと思ったことはいけるところまでいこうと。休学についても悩むことなく、実践経験を積もうとこのプログラムに参加しました。

現場に飛び込んで、活動を始めてみていかがでしたか?

最初の頃は、勢いで飛び出してみたはいいものの、いざ現場に出ると、自分に何ができるのか、どんな力があるのか分からず不安で。しかもそういう感情が背景にあると、動くにうごけない。スキルもないし、周りは生徒とも関係ができているのに、自分にはそれもない。情報量にもついていけない。何かしたいと思って来たのに、何もできない自分が苦しかった時期がありました。その頃は、毎日一つずつ振り返りをしながら、その日起きたことが生徒にとって、自分にとって、拠点にとってどんな意味があったのかを消化していました。自分の分からなさも無力感も、文章に書いて吐き出して。

調子が出てきたのは、毎日振り返りを続けた結果、活動を始めて5か月ほど経った頃からです。自分の価値を発揮すべきところ、自分しか気づいていないところ、自分しか動けていないところ、そういうことが見えてきて。少しずつ考えたことを実現できるようになっていきました。

思い描いてきたはずの理想論が現場では通用しない失敗経験。悔しさを、学びに変える。

活動の中で嬉しかったことや、やりがいを感じたのはどんな時でしたか?

やはり生徒が小さなステップでも1歩踏み出す瞬間はすごく嬉しいなと思いました。

あとは、組織インフラを整えるミッションを任せてもらったことで、自分が直接生徒と関わることで起こせる変化よりも、拠点全体でより多くの変化を生徒に届けることに貢献できたことも、やりがいがありました。生徒の入退館管理システムや情報共有ツールの導入、会議体の整理など、まだ何もなかった拠点のインフラを創り上げていくプロセスは大変でしたが、浸透させるためにできることは何でもやって、形骸化させないために奮闘してきました。最初はインターンの自分にここまで任せてもらえるとは思っていなかったんですけど。

この1年で、何か大きな失敗や挫折はありましたか?

勉強が苦手な生徒に学習習慣を身に着けてもらうためのワークショップで、「勉強することについて考えよう」というテーマ設定をして、誰の意欲も引き出せなかったということがありました。関係性もできていないのに、勉強嫌いな子たちに勉強について考えようと言っても、前向きになれるはずもないですよね。

他にも、ある生徒が進学しないと言い出した時のことです。ちゃんと考えて他の道を選んだというよりは、進路に向き合わず遠ざけるために言っているようでした。「自分が本当に望んでいることは何なのかちゃんと考えて決めよう」と声をかけたら、追い詰めてしまって。自分が知ろうとしていなかっただけで、その時すでにその子はかなり思い詰めた状態だったことが、後になって分かりました。たまに相談もしてくれる子だったので、その子の背景を自分は知っている、というつもりになっていたんです。

大学の頃は、教育現場で成功している自分に強い憧れを持っていて、生徒の本音を考えて関わらなければ、と思っていました。でもいざ自分が飛び込んで、理論上考えてきた通りの関わり方をしてみても、うまくいかない。相手の本音を捉えるコミュニケーションが大切だと思ってきたからこそ、実践できない自分が苦しかったです。その都度二度と同じ失敗をしないために、時間をかけて振り返りを行いました。

大学や大学院で考えてきた理想が、実践では通用しない現実を受け入れるのは苦しさもあったと思います。

辛かったですが、本当に現場経験ができてよかったと考えています。失敗もすべて、飛び込まないとできなかった経験です。失敗から学び、次にどうするかを考えることができたし、自分の考えをアップデートさせることができた。そういう経験があったからこそ色んなことを学んだ自分がいて、経験したからこそ、これからの人との関わり方は違ってくると強く感じています。

職員であり学生である。最強の二刀流を使って自分の学びと成長のために挑戦できる1年間。

この1年は杉浦さんにとってどんな経験になりましたか?

この1年、色々な失敗を含め多くの貴重な経験をさせていただきました。生徒達、上長である職員の皆様、同い年の職員達と共に進んできた経験は、この先自分が目標に向かってきっと進んでいけると思わせてくれる原動力となると考えています。落ち込んだ状態でも、うまくいかないことがあっても、前に進むことはできる。むやみやたらに悩む必要はないと、大きく構えていられる経験になりました。「柔軟になったね」と言ってもらうのですが、実感もあって。前は自分の考えから絶対に動かないというか、固執しがちでしたが、自分一人の考えではうまくいかないことが多いとよく分かりました。自分が大事にしたいことはぶらさずに、でも柔軟にどう生きていくか、そういう視点が身に付いた気がしています。

あとは、リフレクションのスキルも身につきました。起こったことを感情的に処理するというより、その感情含めて自分にとってどういうことだったのかをきちんと処理して、自分自身の血肉にしていけるというか。何事も意味付けをして学びに昇華できるようになりました。

今後は大学院に復学して、社会人や教員にワークショップを行う団体に関わっていく予定です。他にも探究学習のメンターを経験したことで、もっとプロジェクト型学習の学びのあり方を深めたいと感じているので、カタリバが運営するビーラボにも関わっていきます。

もう少し視点を先にすると、大学院卒業後は民間就職をしようかなと思うようになりました。公的教育を、先生方がもっといきいきと本来持っている熱意を発揮できる組織にしたいという関心は変わっていないのですが、このテーマで今の自分が現場に入ってもできることがないなと、実践してみて感じました。まずは民間企業で組織開発の実務をたくさん経験して、現場経験を積んでみたいと思っています。

実践型インターンシッププログラムのどこが魅力だと感じていますか?

一番は、最先端の課題を抱えた現場で、職員と同等の権限をもって動けるところです。理想論ではなく、現実的に自分たちができることを考え続ける1年間になります。自分ができたこと、できなかったこと、実践においては明確に分かれる。できたことはどう伸ばすのか、できなかったことはどう改善するか考え抜いて、ぶつかり続けることができる環境が、このプログラムにはあります。1年間だからこそ、熱量を持って突き進むことができるので、自己認識がどんどん深化していきます。

それに現場では、自分がやりたかったことは何だったのか、自分のいいところ・悪いところはどこなのか、すべて生徒の変化としてフィードバックされます。その分、目も当てられない経験をするかもしれないし、飛躍的に伸びてくれる生徒と出会うかもしれない。でもだからこそ生徒の小さな変化も嬉しいし、実践を振り返って改善して成長できる。職員の方々も、実践型インターンシップの成長にコミットしてくれます。前に進むためのヒントを絶対に一緒に考えて、共に導き出してくれる。やりたいと思ったことも後押ししてくれるし、きちんと指摘もストップもかけてくれる。全面的に成長をサポートしてくれます。

あとは同期の存在も大きかったですね。別々の拠点で活動しているので、やりたいときにオンラインミーティングでお互い考えていることをバーっと報告し合うだけでも勉強になりました。彼の悩みにアドバイスをしたり励ます言葉をかけることも多かったですが、言いながら、あぁ自分にも言えるなと。自分の言葉がそのまま自分を励ます言葉になっていることも多くて、そんな支えにもなっていました。

このインターンシッププログラムを、どんな人にすすめたいと思いますか?

自分は何ができるんだろう?と思っている人や、現状に対して何か違和感を覚えつつも何もできていない人、心の中に曇った感じを抱えている人が飛び込むと、本当に自分と向き合う1年になるので、何か見えるようになるんじゃないかと思います。

教育現場に1年間関わらせてもらうということは、この上もなく素晴らしいことだと思っていて。職員同等の権限を持つため、施策を責任もって考え、生徒に対して全力をぶつけられるし、生徒も全力でこたえてくれる。同時に拠点から一歩外に出れば学生であり、様々な学びの機会に恵まれている。いわば、職員でありながら学生であるという、最強の二刀流が使える状態で、学びや成長のために、自分から挑戦していける場所です。是非もやもやしている方がいたら、とにかく1歩踏み出してみてください。踏み出してみれば、何か見えると、実体験から感じています。

杉浦が経験した実践型インターンシップの概要

[活動期間]
2017年9月〜2018年8月

[活動場所]
双葉みらいラボ(ふたば未来学園高校内)

[担当ミッション]
1/ふたば未来学園高校内につくられた放課後スペース「双葉みらいラボ」「学習する組織」理論を取り入れたスタッフMTGの開発・整理運営のためのインフラ整備(情報共有ツールの開発やシステム導入)

2/生徒情報やイベント成果のデータ化と分析、分析結果を元にした誘い出しのための企画・運営

3/居場所運営や探究メンターとしての授業サポート

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Writer

青柳 望美 パートナー

1983年生まれ。群馬県前橋市出身。大学時代は英語ができないバックパッカー。人材系企業数社で営業・営業企画・Webマーケティング・Webデザインを担当。非営利セクターで働いてみたいと考え2014年4月にカタリバに転職。全国高校生マイプロジェクトの全国展開・雲南市プロジェクト・アダチベースなどの立上げを担当。現在は新規プロジェクトの企画や団体のブランディングなどを担当。カタリバmagazine初代編集長、現在はパートナー。

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